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"Am I being rude?"


みなさんこんにちは。映像字幕翻訳者のNonaといいます。『字幕の世界へようこそ!』では、普段私が見ている映像作品から、翻訳者の視点で「すばらしい!」と思った字幕を紹介していきます。英語や字幕翻訳を学習中の方に楽しく学んで頂けたら嬉しいです。


原文の意味を少し(ときには大胆に)意訳をしているけど、その状況に最もふさわしいセンスがキラッと光る字幕を、一緒に楽んでいきましょう。



さて、今回はドラマ「オーシャンズ8」より。字幕翻訳を担当されたのは、菊地浩司さんと佐藤恵子さんです(公式情報です。劇場公開版とディスク・配信版によって異なるのだと思われます。今回参考にしているのはHulu配信版の字幕です)。

デビー・オーシャン率いる泥棒軍団が狙うのは、アン・ハサウェイ演じる女優ダフネがメットガラで身にまとう貴重なジュエリー。その会場で、ダフネは提供されたスープが全員分そろうまえに手をつけてしまいます。そして「3日間 絶食してたから」と言い訳をします(女優さんって大変ですね)。自分がひとりだけスープを飲んでいたことに気づき、ひとこと言います。それが今回ピックアップする字幕です。


実際の台詞がこちら。


「Am I being rude?」


直訳するなら、「私、失礼でした?」ってところでしょうか。同じテーブルの人にはまだスープが提供されていませんから、待てなくてごめんなさないって顔をして言うんです。その顔がめちゃくちゃかわいくて、こりゃなんでも許しちゃうなって思うんですけど、それはどうでもいいですね。

実際に話している時間は約1.3秒なので、使用できる文字数は4~6文字くらいでしょうか。原音の語尾がしっかりあがっているので、字幕も「?」で終わりたいところです。


では、早速やってみましょう!



「私ったら失礼?」



そのままですね。これでは、何が失礼だったんだろう?と思ってしまう視聴者もいるかもしれません。一気にがっついてから、問題の台詞のあいだに「3日間 絶食してたから」という台詞がはさまっていることもあり、まだ誰も食べていないのに自分だけ手を出してしまってごめんなさいね、という感じが伝わりきらないですね。視聴者に「?」と思わせてしまう字幕になってしまいかねません。


「ドン引きよね?」



うーーーん、ちょっと攻めすぎな気もしますね。たしかに、同じテーブルの人たちは少しビックリした様子でダフネを見ていますが、さすがにドン引きというほどでもないのかな……という感じです。ダフネのキャラ的には「ドン引き」という表現自体は違和感なさそうですけどね。ですが、これだと「3日間の絶食」に対してドン引きしたよねと言っているようにも読めてしまうのでアウトです


「がっつきすぎ?」



悪くないかなと思ったのですが、映像をよく見てみると「がっつく」というほどではありませんでした。「がっつく」だと、ものすごい勢いでズルズル飲んでそうな印象を受けてしまいます。一気にスープを飲みほしたとかなら「がっつく」でも良さそうですが、あくまで美しい女優さんが人前で食事をしているので、ちょっと合わないかなと感じてしまいますね。


では、いよいよ実際の字幕を見てみましょう。


「お行儀悪い?」


めちゃくちゃかわいいですよね!? 台詞を言っているときの表情、自分だけ料理に手をつけてしまった気まずい状況、ちょっと自己中で扱いにくい女優というダフネのキャラクター、そのすべての要素が完璧につまった字幕だと思います。たしかに、全員分がそろうのを待たずに食べてしまうのは「お行儀悪い」ですよね。でも、それでいて憎めない。「いいよいいよ、食べな」って言ってあげたくなる名字幕です。

「オーシャンズ8」には、そのほかにも名字幕がたくさん登場します。ダフネがはじめてジュエリーを見たときの「Holy crap!(くそゴージャス)」とか、デビーの最後の台詞「You would’ve loved it.(見せたかった)」とか、個人的に大好きな字幕です。さすがオーシャンズシリーズだなと思える、最高の映画です。なにより出演している女優陣がすばらしいです。


みなさんは、どんな字幕をつけましたか? 「これこそは!」という名訳を生みだした方は、ぜひTwitterで引用リプなどをつけて教えてくださいね。


それでは、また来月のトピックをお楽しみに!!

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