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"I haven’t done that in years."


みなさんこんにちは。映像字幕翻訳者のNonaといいます。『字幕の世界へようこそ!』では、普段私が見ている映像作品から、翻訳者の視点で「すばらしい!」と思った字幕を紹介していきます。英語や字幕翻訳を学習中の方に楽しく学んで頂けたら嬉しいです。


原文の意味を少し(ときには大胆に)意訳をしているけど、その状況に最もふさわしいセンスがキラッと光る字幕を、一緒に楽んでいきましょう。



さて、今回は映画「タイタニック」より。字幕翻訳を担当されたのは、もちろん戸田奈津子さんです。

もはや説明不要だと思いますが、豪華客船「タイタニック号」で出会ったローズとジャック。船から身を投げようとしていたローズを救ったジャックは、ローズの婚約者キャルに夕食に招かれます(バカにする気満々で呼んでて、クソー!ってなりますよね)。その後、ローズはジャックに誘われて三等客室のパーティーへ。そこには、ローズが知らない世界が広がっていました。堅苦しい世界から解き放たれたかのように、自由なパーティーを楽しみます。ここで、今回ピックアップする字幕の登場です。力自慢をする男達に声をかけたローズは、タバコを一息吸いこむと、ジャックにドレスの裾を持つように指示します。そしてハイヒールを脱ぐと、裸足でつま先立ちをしてみせるのです。数秒だけつま先で立って、ジャックの腕の中に倒れこむローズ。


実際の台詞がこちら。


「I haven’t done that in years.」


直訳すると「もう何年もやっていなかったの」ですね。痛そうな顔をして倒れこんじゃったので、「だって久しぶりにやったんだもん」と、かるく言い訳をしたのかもしれません。

実際に話している時間は約1.5秒なので、使用できる文字数は4~7文字くらいでしょうか。


では、早速やってみましょう!



「久しぶりだから」



なにが?の一言ですね。語尾が「だから」と言い訳がましくなっていますが、何が久しぶりだったのか、そして久しぶりだったから何なのかが見ている人全員に伝わる字幕にはなっていません。母親や婚約者のまえでは見せない、ローズ本来の性格が表現されているせっかくのシーンが「?」で終わってしまいますね。これでは名字幕にはほど遠いです。


「数年ぶりの挑戦よ」



文字数が1文字オーバーです。それに、だから何?と言いたくなる字幕ですね。これから挑戦するというシーンでならいいですが、挑戦が終わってから言うのも違和感があります。それに、ローズが何を言いたいのかがさっぱり伝わりません。シンプルな台詞を訳出するのが、どれだけ難しいかがよくわかりますね。


「久しぶりにやった」



うーーーーん、難しい!!!!! 私の技量では、似たような字幕しかでてこないです。ちょっといい感じの訳がうかんでも、実際の字幕に引きずられすぎていて、自分で考えた字幕じゃないなと感じてしまいました。この字幕も悪くはないのかもしれませんが、決してよくはないですね。「だから何?」のオンパレードです。


では、いよいよ実際の字幕を見てみましょう。


「昔はできたのよ」


はい、レジェンド!

この字幕がすばらしすぎて、ブログを書くための訳例さえ思いうかばなかったのです。原文は「何年もつま先立ちはしていなかった」だけですが、ジャックの腕に倒れこんだことを少し恥ずかしく思ったローズのかわいらしさも表現されていて、完璧な字幕ですよね。「子供のころはできたけど、大人になってからはやってなかったから倒れちゃった」というローズの言いたいことが、しっかり組み込まれています。もう「さすが!」の一言です。このシーン、台詞において、これ以上の字幕はないような気がします。レジェンドと呼ばれるからには、理由があるんです。憧れますね。

余談ですが、このパーティーのシーンでローズと手を握りあってくるくるまわりながら「うわーーー」って言ってるジャックが作品中でいちばん好きです。どうでもいいですね、すみません。


みなさんは、どんな字幕をつけましたか? 「これこそは!」という名訳を生みだした方は、ぜひTwitterで引用リプなどをつけて教えてくださいね。


それでは、また来月のトピックをお楽しみに!!

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