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"We got little baby junkies here."


みなさんこんにちは。映像字幕翻訳者のNonaといいます。『字幕の世界へようこそ!』では、普段私が見ている映像作品から、翻訳者の視点で「すばらしい!」と思った字幕を紹介していきます。英語や字幕翻訳を学習中の方に楽しく学んで頂けたら嬉しいです。


原文の意味を少し(ときには大胆に)意訳をしているけど、その状況に最もふさわしいセンスがキラッと光る字幕を、一緒に楽んでいきましょう。



さて、今回は「ジーサンズ はじめての強盗」より。モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンの3人が、はじめての強盗に挑むという痛快コメディです。コメディながら重いテーマも隠されており、笑いながら観たあとに考えさせられる深い1本です。字幕翻訳を担当されたのは、野口尊子さんです。3人のジーサンズは、強盗の手ほどきを受けるために札付きのワルを訪れます。そこで進められたマリファナを、ちょい悪オヤジを気取って吸ってしまうんですね。ところが、3人中2人がマリファナ初体験だったため、帰りの車内で軽くハイになってしまいます。「顔にあたる風邪が気持ちいい……」なんて言いだした2人を見て、正気を保っているアルバートが言います。


実際の台詞がこちら。


「Oh my God! Look out. We got little baby junkies here.」


直訳すると「なんてこった。赤ちゃんジャンキーがいるぞ」ですね。ちなみに、Oh my God!の部分は実際の字幕でも「何てこった」と訳されています。今回はWe got little baby junkies here.に該当する部分の字幕を取りあげます。少しうんざりした口調ですので、その雰囲気もだしていきたいですね。

実際に話している時間は「Oh my God! Look out. We got little baby junkies here.」

すべてで約3.56秒なので、使用できる文字数は14~16文字くらいでしょうか。そこから、前半部分の字幕「何てこった」の5文字を抜いて、9~11文字でやってみましょう!


「はじめての大麻だったか」



「はじめての強盗」とかけて、はじめての大麻としてみました。悪くはないですが、なんとなく呆れているというよりは微笑ましく見守っているようにも読めてしまう字幕ですね。アルバートは口の悪いキャラクターなので、もう少しパンチが欲しいところです。


「大麻初体験のガキかよ」



前のよりはちょい悪っぽい感じは出てますでしょうか? ただ、「大麻初体験」が漢字の5連続で読みにくいです。いくらアメリカと日本での大麻に対するイメージに差があるとはいえ、これでは「大麻なんてガキのころに誰でも経験してるものだ」とも読めてしまいそうなのも問題ありそうです。


「ハイになりやがって」



これもイマイチですね。アルバートの発言の意図としては、ハイになったことに呆れているのではなく、いい年した大人……というかおじいさんが大麻でそこまでハイになるか?というツッコミだと思うんです。この字幕では、その意図がまるで伝わらないので名字幕とは言えません。


では、いよいよ実際の字幕を見てみましょう。


「にわかジャンキーどもめ」


コメディタッチの作品の雰囲気にもピッタリの、すばらしい字幕ですよね!

baby junkiesを「にわかジャンキー」と訳すセンスに脱帽です。アルバートの意図も、しっかり伝わる字幕になっています。

ちなみにこちらの作品、原題が「Going in Style」なんです。それを「ジーサンズ はじめての強盗」とした邦題のセンスも絶妙で好きです。どんな作品でも、どんな役柄でも、マイケル・ケインは常にマイケル・ケインでなんだか安心する作品でもあります。


みなさんは、どんな字幕をつけましたか? 「これこそは!」という名訳を生みだした方は、ぜひTwitterで引用リプなどをつけて教えてくださいね。


それでは、また来月のトピックをお楽しみに!!

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